開催趣旨

令和(れいわ)2年(2020)は、我が国最古の正史『日本書紀(にほんしょき)』が編纂(へんさん)された養老(ようろう)4年(720)から1300年という記念すべき年です。その冒頭に記された国譲(くにゆず)神話(しんわ)によると、出雲大社に鎮座(ちんざ)するオオクニヌシは「(ゆう)」、すなわち人間の能力を超えた世界、いわば神々や祭祀の世界を司るとされています。一方で、天皇は大和の地において「(けん)」、すなわち目に見える現実世界、政治の世界を司るとされています。つまり、古代において出雲と大和はそれぞれ「幽」と「顕」を象徴する場所として、重要な役割を担っていたのです。


令和2年は、日本が国内外から大いに注目される時でもあります。「幽」と「顕」を象徴する地、島根県と奈良県が東京国立博物館と共同で展覧会を開催し、出雲と大和の名品を一堂に集めて、古代日本の成立やその特質に迫ります。


前期展示

1月15日(水)~2月9日(日)

後期展示

2月11日(火・祝)~3月8日(日)

重要文化財 日本書紀 巻第二

(部分)

後期展示

重要文化財日本書紀 巻第二
南北朝時代・永和1~3年(1375~1377) 愛知・熱田神宮蔵

熱田神宮に伝わり、15巻残っています。附属する永和3年(1377)の寄進状に、京都金蓮寺四代上人浄阿の意により円福寺三代厳阿が熱田神宮に奉納したことが記されています。卜部家の本をもとに写したと巻9の奥書にあります。

日本書紀とは?

神代から持統天皇11年(697)までを記した歴史書。舎人親王(676〜735)が中心となって編纂し、養老4年(720)、元正天皇へ奏上されました。全30巻で、巻1・巻2は神代、巻3の神武天皇から巻30の持統天皇までは編年体でまとめられています。『日本書紀』の写本は、古本系統と卜部家本系統に分類されてきました。和銅5年(712)編纂の歴史書『古事記』よりもたくさんの記事が収められ、現代までさまざまな視点から研究が続けられてきています。

見どころ

国宝 出雲大社本殿 外観

出雲大社のご神宝、東京へ

出雲大社に古くから伝わる手箱や甲冑などのご神宝をはじめ、社殿を飾っていた絵画、境内から出土した巨大柱など、出雲大社の歴史を物語る作品を一堂にご覧いただけます。


国宝 出雲大社本殿 外観

国宝 銅剣・銅鐸・銅矛(部分)

大量の出土青銅器

国宝・荒神谷(こうじんだに)遺跡出土青銅器(銅剣・銅鐸・銅矛)から計189点、国宝・加茂岩倉(かもいわくら)遺跡出土銅鐸のうち30個を展示します。これだけの数が東京でまとまって出品されるのは、およそ20年ぶりです。


国宝 銅剣・銅鐸・銅矛(部分) 島根県出雲市 荒神谷遺跡出土 弥生時代・前2~前1世紀 文化庁蔵(島根県立古代出雲歴史博物館保管)

重要文化財 三角縁神獣鏡

出土数最多の三角縁神獣鏡

黒塚(くろづか)古墳の被葬者を護り鎮めた33面の三角縁神獣鏡は、1つの古墳から出土した数としては全国最多です。その全点を出品します。


重要文化財 三角縁神獣鏡 奈良県天理市 黒塚古墳出土 古墳時代・3世紀 文化庁蔵(奈良県立橿原考古学研究所保管)

重要文化財 浮彫伝薬師三尊像

門外不出の仏像、初公開

1300年の間、大和の地でひっそりと守り伝えられた最古級の石仏が寺外初公開されます。鋭い彫り口や、わずかに残る彩色などの細部にも要注目です。


重要文化財 浮彫伝薬師三尊像 飛鳥~奈良時代・7~8世紀 奈良・石位寺蔵

展示構成

第1章 巨大巨大本殿 出雲大社

「幽」の世界を司るオオクニヌシをまつる出雲大社は、古代には48mの高さを誇ったといわれています。本章では鎌倉時代に本殿を支えた巨大な柱「宇豆柱(うづばしら) 」とともに、出雲大社の歴史と出雲に伝来するご神宝の数々を紹介します。

国宝 秋野鹿蒔絵手箱
後期展示

国宝秋野鹿蒔絵手箱(あきのしかまきえてばこ)
鎌倉時代・13世紀 島根・出雲大社蔵

出雲大社に伝わる古神宝。宝治2年(1248)の造営の際に奉納された可能性が指摘されています。蓋表には土坡流水(どはりゅうすい)のもとで憩う鹿の親子、今を盛りに咲き誇る萩、この萩に群がる小鳥が描かれています。鎌倉時代の手箱を代表する優品です。

重要文化財 赤糸威肩白鎧
前期展示

重要文化財
赤糸威肩白鎧(あかいとおどしかたじろよろい)
室町時代・15世紀 島根・出雲大社蔵

社伝によると、応仁元年(1467)の遷宮の際に、八代将軍足利義政(あしかがよしまさ)が寄進したもので、六代将軍義教(よしのり)着用とされています。室町時代の大鎧の遺品は少なく貴重です。

重要文化財 宇豆柱

重要文化財
宇豆柱(うづばしら)
島根県出雲市 出雲大社境内遺跡出土 
鎌倉時代・宝治2年(1248) 
島根・出雲大社蔵

平成12年(2000)に出雲大社境内から発見された3本1組の柱。それぞれの柱の直径は約1.3m、3本束ねた直径は約3mとなります。この巨大な柱が支えていた本殿の大きさをしのばせるものです。

第2章 出雲 古代祭祀の源流

弥生時代は銅鐸など青銅器を用いた祭祀が盛行しますが、後に出雲では特徴的な形の墳丘墓を舞台とした祭祀へと変化します。本章では弥生時代の祭祀に用いられた品々の移り変わりを通して、出雲における古代祭祀の源流を探ります。

国宝 銅矛・銅剣・銅鐸(部分)

(部分)

国宝銅剣(どうけん)銅鐸(どうたく)銅矛(どうほこ )
島根県出雲市 荒神谷遺跡出土 弥生時代・前2~前1世紀 文化庁蔵(島根県立古代出雲歴史博物館保管)

荒神谷遺跡からは驚くべき数の青銅器が一括して出土しました。武器形青銅器と銅鐸が一緒に埋納されていたことから、『定説を覆す』、『教科書を書き換える』と評された、弥生時代を代表する青銅器群です。

国宝 銅鐸

国宝
銅鐸(どうたく)
島根県雲南市 加茂岩倉遺跡出土 
弥生時代・前2〜前1世紀 
文化庁蔵(島根県立古代出雲歴史博物館保管)

加茂岩倉遺跡からは日本最多となる39個の銅鐸が一括出土しています。銅鐸のなかには、シカ・ウミガメなどの絵や特殊な文様をもつものなど、他にあまり見られない独自色の強い銅鐸もあります。

勾玉

勾玉(まがたま)
島根県出雲市 西谷3号墓出土 
弥生時代・1~3世紀 
島根大学法文学部考古学研究室蔵(出雲弥生の森博物館保管)

四隅突出型墳丘墓(よすみとっしゅつがたふんきゅうぼ)と呼ばれる独特な墳墓から出土したガラス製の勾玉。ほとんど風化せず半透明のコバルトブルーの色合いが美しいものです。大小2つの孔をもつ独特な形状をしています。

第3章 大和 王権誕生の地

大和に出現した前方後円墳は政治権力の象徴で、王権の儀礼が繰り広げられた舞台でもあります。本章では埴輪や副葬品にみる古墳時代の多彩な造形が豊かに展開するさまをたどりつつ、ヤマト王権の成立の背景に迫ります。

重要文化財 画文帯神獣鏡

(部分)

重要文化財画文帯神獣鏡(がもんたいしんじゅうきょう)三角縁神獣鏡(さんかくぶちしんじゅうきょう)
奈良県天理市 黒塚古墳出土 古墳時代・3世紀 文化庁蔵(奈良県立橿原考古学研究所保管)

画文帯神獣鏡1面と三角縁神獣鏡33面が出土。竪穴式石室(たてあなしきせきしつ)内の被葬者の頭部付近をコの字状に囲むように置かれた三角縁神獣鏡は1つの古墳から出土した数としては全国最多です。鏡面を被葬者側に向けて被葬者を護り鎮める意図をもっていました。

国宝 七支刀

国宝
七支刀(しちしとう)
古墳時代・4世紀 奈良・石上神宮蔵

石上神宮(いそのかみじんぐう)に伝わる宝剣。左右の3つずつの枝刃(えだは)と、幹となる本体の刃先をあわせ7つの枝があるように見える刀剣は唯一無二のもの。表裏合わせて61文字の銘文が金で象嵌(ぞうがん)されており、日本史の一級史料と言えます。

重要文化財 円筒埴輪

重要文化財
円筒埴輪(えんとうはにわ)
奈良県桜井市 メスリ山古墳出土 
古墳時代・4世紀 
奈良県立橿原考古学研究所附属博物館蔵

前方後円墳の上に並べられた高さ約2.5mの世界最大の円筒埴輪。被葬者が眠る埋葬施設と外界を遮断し「聖域」を保護していました。その巨大さから高度な技術によって製作されたことが分かります。

第4章 仏(ほとけ)と政(まつりごと)

古墳時代後期に伝来した仏教は、飛鳥時代や奈良時代には天皇、貴族、地方豪族を中心に人々の信仰を集めました。本章では仏教を中心とした国づくりが進められるなかで、国の安泰と人々の生活の安寧を祈り誕生した造形を紹介します。

重要文化財 持国天立像

重要文化財
持国天立像(じこくてんりゅうぞう)(四天王像のうち)
飛鳥時代・7世紀 奈良・當麻寺蔵 
画像提供:奈良国立博物館(撮影:佐々木香輔)

仏の世界を守護する四天王像のうちの1体。現存する四天王像のうちでも古い像で、2mを超える巨大な立ち姿と、髭をたくわえた凜々しい顔立ちが見どころ。脱活乾漆(だっかつかんしつ)という当時の最新技法で造られました。

重要文化財 浮彫伝薬師三尊像

重要文化財浮彫伝薬師三尊像(うきぼりでんやくしさんぞんぞう)
飛鳥~奈良時代・7~8世紀 奈良・石位寺蔵

三輪山(みわやま)の麓に伝わった石仏。遣唐使の時代、中国から伝わった造形をもとに造られました。奈良時代以前の石仏は大変珍しく、風化せずにここまで残ったのは奇跡としか言いようがありません。

重要文化財
持国天立像(じこくてんりゅうぞう)(四天王像のうち)
平安時代・9世紀 島根・萬福寺(大寺薬師)蔵

出雲は神々の国というイメージがありますが、実は古刹も多く、優れた仏像も数多く遺ります。本像は出雲を代表する平安仏。2m近くある一木像が4体揃い、迫力のある空間でご覧いただけます。


  • ※一部の作品は展示替えがございます。